吉祥紋様
日本の伝統文様には、とても縁起の良い吉祥柄が数多くあります。現代にも衣服や食器、家具、建築物などにいたるまで意匠に数多く用いられています。ここではパターン紋様8種を厳選し、由来やギフトシーンを解説します。
知らずのうちに身近にあったのが、先人から受け継いだ素敵な意味があったのだと知ると嬉しいものですね。先様へお祝いする際には、ぜひこの素敵な願いをこめてギフトしてみませんか
青海波(せいがいは)
穏やかな暮らしがいつまでも続きますように
扇状の形の波を鱗のように並べた幾何学模様です。大海原で、波打っては消え又波打つという絶えずある穏やかな波のように、終わりなく続いていく様を重ね、「穏やかな暮らしがいつまでも続くように」との願いが込められています。
日本では、古代より海を生命の母体と考えていて、神々の住むところとしてあがめておりました。それだけに頻繁に目にする紋様ではありますが、日本だけでなく世界各地で見られるポピュラーな文様です。
未来永劫への願いが込められている青海波は、ビジネスでは開業お祝い、ご就任お祝いなどに、パーソナルなギフトでは結婚お祝いなどにおすすめです
紗綾形(さやがた)
未来永劫、繁栄が続きますように
別名:卍崩し、雷文繋ぎ
斜めに崩した卍(まんじ)を連続させた模様です。卍はヒンドゥー教や仏教で縁起の良い印として用いられる文字で、インドのビシュヌ神の胸の旋毛(つむじ)を表す説や、偉大な人物の特徴を示すもの(瑞兆)とされる吉祥柄として古代より使われています。
また、「繋ぎ」の文様が途絶えることがないことで、「不断長久(ふだんちょうきゅう)」を表します。
「紗綾織」の名称の由来は、安土桃山期に明から輸入された絹織物「紗綾織」にこの卍紋が使われており「紗綾形」と呼ぶようになりました。
「卍」が途切れることなく連なることで、繁栄や長寿が永く続くという意味を持ちます。家運隆盛、長寿を願ったお祝いに、ビジネスでは益々の繁栄を願って周年のお祝いにおすすめの柄です
【工字繋ぎ】(こうじつなぎ)
紗綾形と似た伝統文様で、「工」の文字を組み合わせを繰り返す工字繋ぎがあります。紗綾形と同じく繰り返す「繋ぎ」の文様が途絶えることがない「不断長久」を意味する縁起ものとして使われています。
唐草(からくさ)
縁つなぎ、長く繁栄を願って
蔓(つる)が絡み合いながら縦横無尽に伸びていく様子を模した文様です。蔓の生命力は強く、四方へどんどん伸長していくことから「長寿」や「繁栄」を意味します。シルクロードを経由して日本に伝来したもので、日本ではどの家にも唐草模様の風呂敷があったことからも普及されていた様子がうかがえます。
また蔓がつながっていく様子から縁つなぎの意味合いもあります。
ご縁をつなぎ長く繫栄を願い開店お祝いに、いつまでも元気で長生きしてほしい長寿のお祝いにおすすめです。
唐草のバリエーションは、牡丹や蓮・宝相華などの植物と組み合わせが多くみられます。
亀甲(きっこう)+花菱
亀の甲羅の形(六角形)を連続させた幾何学文様。亀は1000年といわれるように、長寿といえば亀甲紋とよく知られたところ。
亀甲紋の起源は明確ではなく、亀の甲羅以外に蜂の巣ともとられていて、海外では「beehive pattern」という名で存在。
六角形は、自然界で安定的な形といわれ、建築物などにハニカム構造が採用されています。
バリエーションは豊富で、「亀甲花菱」(画像のもの)やつ組み合わせた「毘沙門(びしゃもん)亀甲」「三つ盛亀甲」など数十種類あります。
【花菱】花びらを菱形にあしらった文様で、唐花菱などとも呼ばれています。平安貴族が衣装や調度品に好んで用いた「有識文様」。特に戦国武将に人気で家紋にも多く使われ、江戸時代には商人に人気の紋様となりました。
剣と組み合わせた剣花菱や亀甲と組み合わせた亀甲花菱(画像のもの)など種類も豊富です。菱の紋様は生命力の強さを表し「長寿」や「子孫繁栄」の意味があります。武将や商人だけでなく、女性にも人気のあった花菱は、古くから婚礼などのお祝いにも使われています。
矢絣(やがすり)
矢のようにまっすぐ進みますように
別名:矢羽根絣(やばねがすり)、矢筈絣(やはずがすり)。
弓矢の矢羽根が連続された紋様。武家にとって重要な武具であった矢羽根には、魔を祓う破魔矢としての意味もあり、縁起物や神事に使う神具としても使われてきました。
「矢がまっすぐ進む」「的を射る」縁起物として古くから使われてきました。江戸時代には、射た矢が戻ってこないことから「出戻らないように」という意味を込めて、矢絣紋様の着物を花嫁に持たせ縁起を担いでいました。
麻の葉(あさのは)
赤ちゃんの健やかな成長を願って
六角形を規則的に連続させた幾何学文様で、麻の葉に似ていることが名前の由来。
麻は生命力が強く、成長が早い植物で、手をかけずともグングンと成長し真っ直ぐにに大きくなります。このことから、「健康」「成長」の祈りをこめて赤ちゃんや子どもの着物の柄として使われてきました。
また、麻は繊維がとても丈夫で注連縄などの神具にも使われ、穢れを祓うものとして神聖視されているもので、六角形の幾何学模様の形状も合わさって「魔除け」としても意味合いの濃い紋様です。
子供の健やかな成長を願って、出産祝いや誕生祝い、命名時のギフトなどに。ビジネスとしては、新規事業のお祝いとして厄除け、ビジネスの発展を願ってのギフトにおすすめです。
七宝(しっぽう)
良いご縁と繁栄を願って
別名:輪違(わちがい)
同じ円の円周1/4を重ねて連続する文様。四方に限りなく繋がり伸びていく様から、「四方」「十方」などと呼ばれていました。それがなまって「七宝」と呼ばれるようになったとされています。
七宝は、仏教で「金(こん)、銀(ごん)、瑠璃(るり)、玻璃(はり)、珊瑚(さんご)、瑪瑙(めのう)、硨磲(しゃこ)(『無量寿経』)」または「金、銀、瑪瑙、瑠璃、硨磲、真珠、玫瑰(まいかい)(『法華経』))」の7つの宝(七珍)を指す言葉です。富裕、繁栄、地位の高貴さを象徴します。伝統文様の七宝との関連は不明ですが、吉祥文様、有職文様として使われるようになりました。
絶えることのない連鎖と広がりが「繁栄」「子孫繁栄」「良縁」の縁起を持ち、円や丸には「円満」「調和」の意味が含まれます。七宝には、概して人間関係の豊かさを願う意味があり、ビジネス・パーソナルに限らず人の介するシーンで幅広く使える吉祥柄です
市松(いちまつ)
繁栄、事業の拡大を願って
別名:石畳(いしだたみ)
色違いの正方形を交互に連続させた文様。敷石が由来で、古くは霰(あられ)と呼ばれて能装束や建築で使われていました。
江戸時代になると、中村座の歌舞伎俳優 市松が石畳紋の袴を着て評判となったことから市松模様と呼ばれ親しまれるようになりました。
絶えることなく連続することから「繁栄」「事業の拡大」「子孫繁栄」を意味します。