強化ガラスの秘密 ~割れ方にも理由がある~

スマホのガラスがバキバキに割れていたり、事故現場で粉々になったガラス片を見たことはありませんか?
強化ガラスは、一般的なガラスと比べて強度が高く、安全性にも優れている特殊なガラスです。しかし、「強化ガラスだから割れない」と思われがちですが、実は割れるときには木っ端微塵になるものもあれば、ひび割れのように破損するものもあります。そんな強化ガラスの秘密に迫ります。

スマホ 強化ガラス

1. 強化ガラスの製造方法

強化ガラスは、通常のガラスを約600℃以上に加熱し、急速に冷却することで作られます。この過程で、ガラスの表面に圧縮応力、内部に引張応力が生じ、これが通常のガラスよりも数倍の強度を持つ理由です。

この製造方法には主に以下の2種類があります。

  • 物理強化ガラス:高温加熱後に急冷することで、表面に強い圧縮応力を持たせる方法。
  • 化学強化ガラス:特定の化学処理(イオン交換)により、表面の分子構造を変化させて強度を高める方法。

2. 強化ガラスの特性

強化ガラスには大きく3つの特徴があります。

  • 高い耐衝撃性:通常のガラスの約3~5倍の強度を持つ。
  • 耐熱性の向上:急激な温度変化にも強く、120℃~200℃の温度差にも耐えられる。
  • 安全な割れ方(物理強化ガラスの場合):割れるときは細かい粒状になり、鋭利な破片ができにくい。

3. 物理強化ガラスと化学強化ガラスの割れ方の違い

強化ガラスはすべて同じように割れるわけではなく、製造方法によって異なります。

  • 物理強化ガラス(熱処理強化ガラス):一点に強い衝撃が加わると一気に破砕し、細かい粒子状になります。
  • 化学強化ガラス:物理強化ガラスほど粉々にはならず、ひび割れのように破損することが多いです。これは、表面だけに圧縮応力がかかり、内部の引張応力が浅い範囲にとどまるためです。そのため、スマートフォンの画面のように、割れてもある程度形を保ちます。

4. 強化ガラスの用途と使い分け

強化ガラスは、その製造方法や特性により、さまざまな用途で使い分けられています。

物理強化ガラスの使用例

大きなガラスが破損すると、鋭利で大きさのある破片になると、大変危険です。
そのため、万一破損した場合にケガをしにくいような材質にしています

  • 建築分野:窓ガラスやドア、パーティションなど、安全性が求められる場所に使用されます。
  • 家具:ガラステーブルや棚板など、強度と安全性が必要な家具に採用されています。
  • 自動車のサイドウィンドウやリアウィンドウ:割れると粒状になるため、乗員がケガしにくい特性があります。
  • グラス:グラスは口部が特にかけやすく、口部のみ物理強化をかけているグラスがあります。アトリエピジョンでも口部強化されているグラスを取り扱っています

化学強化ガラスの使用例

  • スマートフォンやタブレットの画面:薄くて強度が求められるため、化学強化ガラスが適しています。
  • 高級時計:傷が付きにくく、透明度が高いため採用されています。
  • 航空機の窓:高い耐久性と安全性が必要とされるため、化学強化ガラスが使用されています。
  • グラス:身近にあるグラスの中も表面をイオン強化しているグラスが多々見られます。繊細なワイングラスなど普段使いがしやすいよう強化されているグラスが増えています。

自動車のガラス使用状況

  • フロントガラス:2枚のガラスの間にPVB(ポリビニルブチラール)でできたプラスチックの中間膜を挟み込み、3層構造にした合わせガラスが採用されています。
  • サイドウィンドウやリアウィンドウ:強化ガラスが使用されています。

スペースシャトルの窓

こちらは強化ガラスではないのですが、特殊な耐熱ガラスが使用されているのはスペースシャトルのマド。具体的には、シリカ系耐熱ガラスやアルミノシリケートガラスといった、極端な温度変化に耐えられる素材が採用されています。スペースシャトルの外部は、再突入時に約1,650℃に達するため、窓も強い熱と圧力にさらされます。そのため、通常のガラスでは耐えられず、耐熱性・耐圧性・衝撃吸収性を兼ね備えた特殊ガラスが使われています。

5. 強化ガラスと彫刻

強化ガラスは、安全性の観点から設計されており、特に物理強化ガラスは割れる際には細かい粒子状になります。そのため、彫刻を施すことには向いていません。特に深い彫刻は応力バランスを崩し、突然の破損につながる可能性があります。

しかし、一部の強化ガラスに対しては、浅めの彫刻を施すことで対応できる場合もあります。特に化学強化ガラスは、割れ方が異なるため、慎重に加工すれば彫刻が可能なこともあります。

アトリエピジョンでは一部対応していますので、お気軽にお問い合わせくださいませ
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