漆器【ジャパン】

陶磁器や磁器が「チャイナ」と呼ばれるように漆や漆器は海外では「ジャパン」と呼ばれ親しまれているようです。

先日訪れた古民家を改装した和レストランでは食器まで引継いでいて、素晴らしい器とともに料理を提供されてました。古い器には金継ぎのあとがあり、オーナー自らが金継ぎをされているとのこと。金継ぎをすることは、割れた器を補修するだけでなく、命をつないでいるように思えます。古い工芸品に金継ぎをすることで新たな工芸品として生まれ変わっているからです。

補修の観点から見てみます。
昔からある漆器は驚くほど強いのは、金継ぎにできるほどの接着力と何よりも日本でとれた漆が日本の風土に合ったものなのだからなのだと思います。

残念なことに現在では日本でとれる漆は希少でとても高価。5倍以上の値がついてるそうですよ。神社や仏閣などで主に使われていますが、市場に出回っている漆器のほとんどは多くが中国や東南アジアからの漆が使われているとのこと。

ところでって何なのでしょうか。
人は傷ができればカサブタができますが、樹木に傷がつくと傷口を固めるために出る樹液がカサブタの役割をしてくれます。それが「ウルシオール」という樹脂成分。日本で採取された漆にはウルシオールが多く、日本で使用するのにぴったりなんですね。ですので、金継ぎに使う漆も高価ではあるけど日本製のほうが良いというのはうなづけます。

さて、漆器金継ぎもほぼ同じ工程を重ねます。採取した漆液から不純物をろ過して取除いた『生漆(きうるし)』を使って擦り漆をします。生漆は透明な琥珀色ですが、これを塗ることで木地固めになるので、この状態のままで使用することもできます。私たちがよく目にする黒漆は生漆に鉄混入による酸化で光沢のある深い黒色が出来ます。その名の通り漆黒です。元が琥珀色のため純白はできませんが黒と純白以外は顔料を入れて色を作ります。

話を戻して、擦り漆で木地を固めたあと、錆漆付け、錆研ぎ、漆塗り、漆研ぎ、、と工程があり乾燥の時間も必要とするため時間がかかります。この乾燥は一般的な乾燥と違い、水分が蒸発して乾燥するのではなく、空気中の水分を取込んでウルシオールが固体化していくことを言います。なので70%ほどの湿度が必要で、梅雨期はとっても固まりやすい時なのです。

こんなふうにみていくと、何十年も前からの漆器って本当に貴重ですね。
ちなみに、漆器は熱や酸・アルカリには強いのですが紫外線に弱いです。直射日光の当たる窓際の食器棚の保管は避けたほうがよさそうです。

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